日本ウェルネス高等学校 野球部「道なき道を行く」

ここ数年の間で、通信制高校の野球部が力をつけてきた。この夏の甲子園では、クラーク記念国際高校が北北海道代表として甲子園に初出場。また神奈川では先日の秋の大会で星槎国際湘南が県内ベスト8という活躍を残した。

そしてこの東京都にも、通信制の新進気鋭校がある。日本ウェルネス高等学校だ。2016年の夏には東東京都大会でベスト16、秋季大会でもブロック予選を突破し本大会出場と着実に力を伸ばしてきている。

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「”野球をやるの前の野球”が必ず力になる」

監督を務めるのは美齊津忠也(みさいつただなり)監督。土浦日大高、日大で投手としてプレー後、青森山田高校、日大などトップチームのコーチを経験してきた人物だ。

インタビュー中、美齊津監督はこんな言葉を口にした。

「選手たちには”野球をやる前の野球”をしっかり取り組もうと言っています」

野球をやる前の野球…….いったいどういう意味なのだろうか?

「うちは週に1回は座学の時間を設けていて、もちろん戦術的な講義もするんですが、それとは別に、学校生活の送り方だったり、礼儀作法、ものの考え方、そういったこともきちんと取り組んでいこうよと選手に話すんです。それらがきちんとできるようになるとバッティングだったり守備にいきてくるんですよ。それが私の考える”野球をやる前の野球”です」と美齊津監督。

「そうした振る舞いは覚悟につながってくるわけですから。強豪校との違いはそういった覚悟の部分だと思っています。一日は24時間しかない。代償だってでてくるわけですよね。時間の使い方もそうですし、そういったところをしっかりやっていかないと強豪校とは勝負できないと思っています」

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「1勝」→「甲子園」、受け継がれる思い

「私が初めて就任したときには部員が7人という状況。一番最初に選手に対し『何がしたいか?』と聞いたら『とにかく1勝したい』と。そこから始まったんです」と美齊津監督。

「春も負け、夏も負け、けど秋のブロック予選でついに1勝して。そのあとの正月ですかね。選手に『練習ノートに新年の目標を書いてこい』と言ったら、次は『甲子園に出たい』と書いてきたんですよ。1勝したことで、自分たちが今までやってきたことが間違っていなかったという選手たちの自信になって、さらに新しい希望、目標ができた。先輩たちのそういった思いをこの子たちは受け継いで今のチームがある。今はその目標に向かって歩いている途中なんです」

中学の頃スターとして鳴らした選手はほとんどいない、むしろ中学の頃には1勝もできなかったチームでやってきたという選手もいるのだという。

「今までの彼らは、中学校の時も含めてそうですけど、結果がともなわなくて苦労していたという部分があったんじゃないでしょうか。だからこそ、教えていけば教えていくほど、また、勝ち進めば勝ち進むほど彼らが自信をつけているのは間違いなく感じます。そして、彼らもチームとして進んでいく方向にきちっと自分たちが進んでいるんだなっていう手応えを感じているんだと思うので、それが、『東京のトップを取るんだ』という目標が見え始めていることにつながっているんでしょう」

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来春の目標は夏のシード権獲得、そしてベスト8

「今年のチームカラーは守りを中心として少ないチャンスをものにするチーム。グラウンドでの全力疾走はもちろん、いろいろなことに”気づける”チームにしていきたい」

と主将の並木海弥(なみきかいや)と副主将の森健太(もりけんた)。

「来春に向けてこのひと冬で進化して、秋以上の力を発揮したい。冬はトレーニング系のメニューが多いのですが、弱音を吐かずに自分のためになると思ってしっかりやっていきたいですし、体格的にも細い人が多いので、食事のほうでも動いている以上にたくさん食べて体を大きくして、前を向いてこの冬を乗り越えていきたいです」

そして目指すのは夏のシード権獲得だ。それには春の大会で都ベスト16に食い込む必要がある。東西あわせての大会となるので、かなりの激戦となるが、これまで成し遂げたことのないベスト8というところも視野に入れて励んでいるという。

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主将の並木海弥。ショートを守り、チームを引っ張る。球種・コース・バッターのスイングから1球ずつ踏み出しを変えることが自分の守備のポイントだという
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副主将の森健太。前年度チームからバッティングでチームを引っ張ってきた。自分の打撃のポイントは「考えすぎすにスイングすること」
道なき道を行く

最後に、美齊津監督はこう話してくれた。

「先ほども覚悟ということを言いましたけど、今選手たちは東京のトップというところを本気で目指し始めたわけですけど、それはまだ希望だけで覚悟という部分ではまだまだだと思います。それでも選手たちがその道を歩きたいというのであれば、私が先頭にたって道案内をするのが役割だと思っています。本当にわれわれは道なき道を作っている、新しい道を作るんだという気持ちで選手とやっています。草をかきわけ、野原を走っているつもりなので、我々が歩いた道が本当の道になるかなという感じですね」

日本ウェルネス高校野球部の挑戦ははじまったばかり。今の選手たちの思いと足跡は、やがて下の世代に受け継がれ、伝統として繋がっていく。今後、同校がどのような歴史を作っていくのか。通信制高校の可能性とともに、注目していきたい。

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文・取材◎伊藤文人

〔学校情報〕
日本ウェルネス高等学校(東京キャンパス)
〒175-0094
東京都板橋区成増1-12-19
TEL:03-3938-7500